Kyoto Brewing Company (京都醸造)

帰省の旅

スタイル
ABV
7%
IBU
23

このビールについて

レビュー要約

人々はこのビールは、アクセスでき、高アルコール度を持つ驚きのサイゾンであると評価しています。ドライでスパイシーで、ホップの苦味を感じる。植物のような香りがあり、ベルジャンのセゾンと最近のアメリカンなセゾンのハイブリッド的な印象を受けます。

帰省の旅の説明

限定醸造シリーズ第42弾 (274バッチ目):先日、春夏秋冬”夏”をリリースする際に書いた通り、セゾン×IPAであるこのビールのもととなった2つのスタイルはともにKBC皆がこよなく愛するスタイルです。ですが、私たちが仕込むセゾンの多くはこのスタイルが誕生したベルギーで伝統的に使われてきた原料よりもクラフトビール革命を牽引しているともいえる世界の新興地域の原料を使ったものが多かったというのが事実と言えます。定番ビールの”一期一会”に使っているホップはアメリカ産Cascadeとニュージーランド産Pacific Jadeであり、限定醸造として今年リリースした”白髪の双子”は同じくニュージーランド産ホップを主役とし、はたまた、過去リリースした”維新伝心”ではMosaicやNelson Sauvin、Citraといった今まさに流行りの品種を使って仕込みました。

そんなこれまでの流れとは一線を画すべく、今回のビールにおいてはピルスナーモルトとヨーロッパ産ホップを主体とし、これぞ伝統的なセゾンともいえるスタイルの原点に立ち返るようなビールを目指しました。使用した麦芽は全てドイツ産ピルスナーモルトとし、ホップにはフランス産Aramisとセゾンが全盛期を迎えていた時代に広く使われていたイギリス産のEast Kent Goldingsを選びました。これにより、麦芽が生む澄んだキリっとした特徴の裏にスパイスやハーブ、そして少し草っぽい香りを感じられる、私たちがこれまで仕込んできた中で最も伝統的なセゾンに近い姿を表現すべく役目を担っています。そして、本来のセゾンがもつ発酵過程で生じる独特な特徴を引き出すべく、”白髪の双子”と同様にベルジャンエールとベルセゾン酵母をあわせて使いました。ですが、前回のやり方に一捻り加えて、30℃というこれまでやったことない高い温度で発酵を進めました。この温度、人間に置き換えて考えてみるとさほど驚くような高い温度に感じないでしょうが、一般的なエール酵母の発酵温度は19-22℃が適温とされているため、この小さい生き物たちにとっていかに普段と違った環境に身を置かれているか想像できるでしょう!

一方のセゾン酵母はかなり強靭であり、セゾンスタイルの王道とも称されるSaison Dupontは35℃という高い温度で発酵しているともいわれています。温度が高いと普段の発酵過程ではみせないようなダイナミックかつ様々な味わいや香りが生まれ、まさにそれこそ私たちが今回の挑戦で楽しみにしていたことでもあります。今回のビールにおいては、ハウス酵母が生んだバナナのような特徴がしっかりと下支えし、ベルセゾン酵母が生み出すピリッと口に感じる特徴がビールをスッキリとしたドライな飲み口にまとめ上げています。7%という高いアルコール度数でありながらも、様々な要素が複雑かつうまく絡み合った今回のビールは私たちが思うこれぞセゾンというスタイルに見合ったものに仕上がったように思います。乾杯!

名前の由来: お盆や年末年始などの休暇に故郷に帰り、久しぶりに会う父や母の顔、見慣れた風景や懐かしい香り、再会した家族や旧友との語らいの中で、自分のルーツがここにあることに改めて気づくことがある。そんな帰省の旅のように、今回のセゾンビールはセゾンのルーツを再確認するビールとなった。