人々はこのビールについて、ドライでほぼノンアル!でも少し酸味かつスモーキーの香ばしさがとても良いと評価していると言います。また、麦ジュース感覚でありながら美味しいとも言っています。さらに、トマトジュースで割ることで仕事中にも飲みやすいと述べているほか、トマトとオリーブの炒め物と一緒に食べると味がよくなるとも評価しています。
ヨーロッパのビールの歴史は深く、伝統的なビールが各地で生まれ、商業化する前は家庭でも作られていたようです。今回は北欧の農家がルーツのビールの歴史を発端に、同様なビールがヨーロッパ各地で作られていたのではという推測も含め、昔ながらの技法を用いました。ファームハウスエールというと農家だけが作っていたように思われますが、昔はほとんどの家庭が農家のようなものだったのでしょう。自分達の穀粒、大麦以外にも小麦やライ麦、雑穀など様々で、粗野な道具で麦芽を作っていたようで、現代のように淡色の麦芽を作るのは難しく、濃色の麦芽が多かったとか。地域毎で様々なビールがあったようで、大別すると贅沢な祭事用と水代わりに飲む質素な日常用があり、前者は度数8〜10%程、後者は2〜4%程のものが多かったようです。また麦汁を煮込む大鍋がなかった家庭もあるようで、ありあわせの設備、例えば木製の桶や小鍋、時には焼き石を用いていたようです。パシフィックには当然大きな釜がありますが今回は敢えて役目を果たさず、代わりに熱湯をマッシュに注ぎ続ける手法で仕込みました。煮沸しない製法ゆえ、タンパク質が特に残りモルト由来の香りがより顕著になります。口に含むとパン様の穀物感や柔らかさがあり、特に濃色麦芽と仄かな酸味からドイツ系の黒いパンを連想させます。今回のビールは、誰が飲んでも「美味しい!」とはならないと思いますが、食べ物との組み合わせや飲むシチュエーション次第では他に代わりのない存在になる気もしますし、歴史に思い馳せる時には十分すぎるくらい古典的なビールでもあります。果たしてこれは、名作か、迷作か?