夜更け

イギリスの伝統的なスタイル、ビターエールを作ってみました。ただ作ってみましたと言うと適当にやったみたいに聞こえてしまいますが、私にとっては思い入れの強いスタイルです。ビターエールといっても、様々な種類があり、醸造所や地域によって異なる味わいや色を持ちます。もちろん、スタイルのガイドラインに従って厳密に分類することはできますが、自分にとってのビターエールというのは人それぞれ異なり、その境目はぼんやりとしたものだと思います。他のスタイルでも同じことが言えるかもしれませんね。しかし、ビターエールが好きな人々はそれぞれ自分にとってのビターエールを大切にしているように感じます。私にとっては、昔からの親友のような存在で、楽しい時も辛い時も一緒にいてくれた頼もしい存在です。派手な味わいはないかもしれませんが、シェリーやピルスナーと同じように、一生かけて向き合いたいスタイルです。そこで、まずは自分が思い描くビターエールを作ってみました。第一歩としては、会話が弾むようなビターエールになったと思います。飲み始めたら、気づいたら夜が過ぎていた。最終的には、夜が明け始める頃まで楽しめたらと思います。余談ですが、このビールは2022年から2023年に変わった瞬間、0時0分から醸造を開始しました。それが結構大変（眠くて）だったので、「リアル夜更かし醸造」という血の滲むような努力を感じていただけると嬉しいです。一年の新しい始まりとともに作り出されたビールですので、ご縁という意味でも幸運を呼び込んでくれると思います。それでは、一口、二口と飲み進むうちにじんわりと広がるほんのりした甘さや、主張しすぎないが確実に締めくくってくれる苦味。温度が変わると、黒糖やベリーのような特徴も感じられます。優しい口当たりと、アルコール度数が比較的低いので、何杯でも飲まれる味わいです。是非、ゆっくりとお楽しみください。